5《 緑内障シリーズ 第5回 》
〜目薬だけ?手術が必要?治療の流れをわかりやすく解説〜
「緑内障と診断されました。」
眼科でそう言われた瞬間、不安になったという方は多いのではないでしょうか。
「このまま失明してしまうの?」
「手術しなければいけないの?」
「目薬だけで本当に大丈夫?」
初めて緑内障と診断されると、わからないことばかりで心配になりますよね!!
実際に外来でも、患者さんから一番多く聞かれる質問の一つが、
「これからどんな治療をするんですか?」「手術ば必要ですか?」
などの不安そうな声が多いです。
緑内障は、高血圧や糖尿病と同じように、長く付き合っていく病気です。
しかし、適切な治療を続けることで、病気の進行を抑え、今の見える力を長く守れる可能性があります。
私は20年以上眼科で勤務し、多くの緑内障患者さんと関わってきました。
その中で感じるのは、「病気を正しく知っている人ほど、落ち着いて治療を続けられる」ということです。
今回は、緑内障の治療について、できるだけ専門用語を使わず、初めて診断された方にもわかりやすく
ご紹介します。

緑内障治療の目的を知っておこう!!
まず、一番大切なことをお伝えします。
緑内障の治療は、「失った視野を元に戻す治療」ではありません。
これは少しショックに感じる方もいるかもしれません。
緑内障では、視神経が少しずつ傷つくことで視野が欠けていきます。
現在の医療では、一度傷ついた視神経を元通りに回復させることは難しいと考えられています。
だからこそ、緑内障の治療では
「これ以上悪くならないようにすること」
が最大の目的になります。
つまり、
- 今見えている視野を守る
- 病気の進行をできるだけ遅らせる
- 将来も見える生活を続けられるようにする
これが治療の目標です。
「治す」というよりも、「守る」というイメージを持つとわかりやすいでしょう。
実際に、早い段階で治療を始め、きちんと通院を続けている患者さんの中には、何十年後も大きな変化
なく生活されている方も少なくありません。
そのため、早期発見・早期治療がとても重要なのです。
緑内障治療の基本は「眼圧を下げること」
緑内障の治療では、多くの場合、眼圧(目の中の圧力)を下げることが中心になります。
眼圧とは、目の中を満たしている「房水(ぼうすい)」という透明な液体によって保たれている圧力のことです。
健康な目では、この房水は一定量作られ、一定量排出されています。
しかし、このバランスが崩れると眼圧が高くなり、視神経へ負担がかかることがあります。
眼圧が高い状態が続くと、視神経が傷つきやすくなり、緑内障が進行する原因の一つになります。
ただし、日本人では正常眼圧緑内障といって、眼圧が正常範囲でも緑内障になる方が多いことが知られています。
そのため、「眼圧が正常だから安心」というわけではありません。
患者さん一人ひとりに合わせた「目標眼圧」を設定し、その値まで眼圧を下げることを目指して治療を行います。

最初に行われることが多い「目薬治療」
緑内障と診断された多くの患者さんは、まず目薬による治療から始まります。
目薬は毎日自宅で続けられる治療であり、現在の緑内障治療の基本となっています。
最近ではさまざまな種類の目薬があり、患者さんの状態に合わせて選択されます。
目薬はどんな効果があるの?
「目薬をさすだけで本当に効果があるの?」そう思う方もいるかもしれません。
緑内障の目薬は、眼圧を下げるための薬です。目の中の房水の量を減らしたり、外へ流れやすくしたり
することで目の圧を調節し、視神経への負担を軽くします。負担を減らすことができれば、
視野が狭くなる進行を遅くすること期待できます。
目薬はいくつかのタイプにわかれます。
■房水を作られる量を減らすタイプ
目の中で作られる房水の量を減らし、眼圧を下げます。
上に示す図解の②・③・⑥のタイプの目薬がそれにあたります。
代表的な目薬は、チモプトール・ミケラン・ペトプティック・ハイパジールコーワなどがあります。



③の代表的な目薬は、エイゾプト・トルソプトがあります。
⑥の代表的な目薬には、アイファガンがあります。
■房水を流れやすくするタイプ
目の外へ房水が排出されやすくなり、眼圧が下がります。目薬は
上に示す図解の①・④・⑦のタイプの目薬がそれにあたります。
①の代表的な目薬は、キサラタン・トラバタンズ・タプロス・ルミガンなどがあります。

④の代表的な目薬はグラナテックです。
そして、新薬としてロープレッサが国内で承認され2026年8月より順次発売予定となっている目薬です。


■両方の働きを持つタイプ
最近では、一つの目薬で複数の働きを持つものや、2種類の成分が一つになった配合点眼薬もあります。
目薬の種類が減ることで、患者さんの負担を軽くできる場合もあります。
上に示す図解の⑤のタイプの目薬がそれにあたります。
⑤の代表的な目薬は、ミケルナ・アイベータ・グラアルファ・コソプト・ザラカム・デュオトラバ・タプコム・アゾルガ・アイラミドなどの目薬があります。


どの目薬が合うかは、人によって異なります。
眼圧の下がり方だけでなく、副作用や生活スタイルも考えながら医師が選択しています。
点眼は「毎日続けること」が一番大切!!
緑内障は、ほとんどの場合痛みがありません。
長い治療のうちには見え方も視野も少しずつ変化しますが、自分ではなかなか進行していることに気付きにくい病気です。
そのため、
「今日は忘れてしまった。」
「見え方は変わらないから大丈夫かな。」
と思ってしまう方もいます。
しかし、緑内障の目薬は、毎日続けることで効果を発揮する治療です。
自己判断で点眼をやめてしまうと、眼圧が上がり、気付かないうちに病気が進行してしまう可能性があります。
実際に外来でも、
「忙しくて点眼を忘れることが増えてしまった。」という患者さんは少なくありません。
だからこそ、毎日の生活の中で無理なく続けられる工夫を見つけることも大切です。
例えば、
- 朝の歯磨きと一緒に点眼する
- 寝る前の習慣にする
- スマートフォンのアラームを活用する
- カレンダーにチェックを付ける
など、自分に合った方法を取り入れることで、点眼忘れを減らすことにつながります。
また、ご家族が声をかけたり、一緒に確認したりすることも、治療を続けるうえで大きな支えになります。
目薬には副作用が出ることもあります。
緑内障の目薬は長く続ける治療だからこそ、副作用について知っておくことも大切です。
とはいえ、副作用があるからといって「目薬は怖い」と過度に心配する必要はありません。
多くの方は問題なく使用できますし、副作用が気になる場合は、目薬の種類を変更したり、点眼方法を工夫したりすることで改善することもあります。
例えば、緑内障の目薬では次のような症状がみられることがあります。
- 目が充血する
- しみる感じがする
- まぶたの色が濃くなる
- まつ毛が長くなる
- 目の周りの皮膚が黒ずむ
- 目のくぼみが深く見えることがある
これらはすべての方に起こるわけではありません。
「いつもと違うな」と感じたら、自己判断で目薬を中止せず、診察の際に医師へ相談しましょう。
目薬の選択肢は数多くありますが、どの目薬を選択するかは、実はとても重要です。
治療を続けながら、自分に合った薬を見つけていくことも緑内障治療の一つです。
点眼を忘れてしまったらどうすればいい?
外来でよく聞かれる質問があります。
「先生、昨日は目薬を忘れてしまいました。」
そんな時は慌てる必要はありません。
思い出してすぐであれば点眼してもよい場合がありますが、次の点眼時間が近い場合は、
忘れた分をまとめて点眼するのではなく、通常どおり次の時間に点眼することが一般的です。
ただし、目薬の種類によって対応が異なる場合があります。
自己判断せず、医師や薬剤師から説明された方法に従うようにしましょう。
一番大切なのは、「忘れてしまったからもういいや」と治療そのものをやめてしまわないことです。
毎日100点を目指すよりも、長く続けることが何より重要です。
目薬だけでは十分でない場合は?
目薬を続けていても、思うように眼圧が下がらないことがあります。
また、視野検査やOCT検査で病気の進行が確認された場合には、治療を見直すことがあります。
その際には、
- 目薬を追加する
- 別の種類へ変更する
- レーザー治療を行う
- 手術を検討する
など、その方の状態に合わせて治療方法を選択します。
「目薬で治らなかったから失敗」というわけではありません。
緑内障は一人ひとり進行のスピードが異なるため、その時々で最適な治療を選ぶことが大切なのです。
レーザー治療とは?
緑内障にはレーザー治療が行われることがあります。
「レーザー」と聞くと、大がかりな治療を想像される方もいますが、多くの場合は外来で行われ、
入院が必要ないこともあります。
点眼麻酔をして治療を行うため、大きな痛みを感じることは少ないとされています。
レーザー治療の目的は、房水が流れやすくなるようにして眼圧を下げることです。
ただし、すべての緑内障に適しているわけではなく、病気の種類や進行状況によって適応が異なります。
また、レーザー治療を受けたからといって、その後の通院や点眼が不要になるとは限りません。
治療後も定期的な経過観察が必要です。
手術が必要になる時は、どんな時?
「緑内障と診断されたら、いつか必ず手術になりますか?」
これもよくいただく質問です。
答えは...
必ずしも手術になるわけではありません!!
手術は、
- 目薬やレーザー治療だけでは十分な効果が得られない場合
- 病気の進行が早い場合
- さらに眼圧を下げる必要がある場合
などに検討されます。
つまり、より大切な視野を守るための選択肢の一つです。
緑内障の手術にはさまざまな種類があります
現在では、緑内障手術にもいくつかの方法があります。
代表的なものには、
- 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
- 線維柱帯切開術
- チューブシャント手術
- MIGS(低侵襲緑内障手術)
などがあります。
近年注目されているMIGSは、身体への負担が比較的少なく、白内障手術と同時に行われることもあります。
どの方法が適しているかは、緑内障の種類や進行具合、患者さんの生活背景などを考慮しながら
医師が判断します。
定期検査も大切な「治療」の一つ
緑内障では、目薬を続けているだけでは十分ではありません。
現在の治療で病気が進行していないかを確認するために、定期的な検査が欠かせません。
主な検査には、
- 眼圧検査
- OCT検査
- 視野検査
- 眼底検査
などがあります。
これらの検査結果をもとに、「今の治療で良いのか」「治療を変更した方がよいのか」を判断します。
自覚症状がなくても、検査では変化が見つかることがあります。
だからこそ、調子が良いと感じていても定期受診を続けることが大切です。
よくある質問(Q&A)
Q. 緑内障は治りますか?
残念ながら、一度傷ついた視神経を元に戻す治療は現在の医療では難しいとされています。
しかし、早期に治療を始めることで進行を遅らせ、見える生活を長く守れる可能性があります。
Q. 目薬は一生続けるのですか?
多くの場合、長期間の点眼治療が必要になります。
ただし、治療内容は病状に応じて見直されるため、自己判断で中止せず、医師と相談しながら
続けることが大切です。
Q. 手術をすれば治療は終わりますか?
手術は眼圧を下げるための治療であり、緑内障そのものを完治させる治療ではありません。
手術後も定期検査や点眼が必要になることがあります。

20年以上眼科で働く中で、多くの緑内障患者さんと出会ってきました。
その中で強く感じるのは、「毎日の積み重ね」が将来の見え方を大きく左右するということです。
❶毎日,目薬を続けること!!
❷決められた日に受診すること!!
➌定期検査を受けること!!
どれも特別なことではありません。
しかし、その小さな積み重ねが、5年後、10年後、20年後の「見える」を守ることにつながります。
緑内障は、一人で頑張る病気ではありません。
医師、看護師、視能訓練士、薬剤師など、多くの医療スタッフが皆さんを支えています。
不安なことやわからないことがあれば、一人で抱え込まず、遠慮なく相談してください。
まとめ
緑内障の治療は、「見えなくなった視野を取り戻す」ためではなく、「今ある見える力をできるだけ長
く守る」ために行います。
治療の基本は目薬ですが、病状によってはレーザー治療や手術が選択されることもあります。
そして、どの治療を受ける場合でも共通して大切なのは、治療を継続することです。
緑内障は、自覚症状が少ないからこそ、自己判断で治療を中断しないことがとても重要です。
定期的な受診と検査を続けながら、医師と相談し、その時々に合った治療を受けることで、
大切な視野を守ることにつながります。
眼科ナースしーさんたは、これからも皆さんの「見える」を守るために、
眼科で役立つ知識をわかりやすく発信していきます。

第6回 「目薬は一生続けるの?」
緑内障と診断されてから、長く目薬の治療をしているが、いったい、いつまで目薬は続けていくのだろう?そんな不安にしーさんたが寄り添います。
