7 《 白内障シリーズ 第7回 》
単焦点レンズと多焦点レンズの違い
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを目の中に入れます。
そこで患者さんが悩むのが、
「単焦点レンズと多焦点レンズ、どっちがいいの?」
ということ。
「多焦点の方が高いから、よく見えるレンズなの?」
そう思われる方もいるかもしれません。
でも実は・・・
高いレンズ=すべての人にとって一番いいレンズ
とは限りません。
大切なのは、手術後にどんな見え方を希望するのかです。
今回は、2つのレンズの違いをわかりやすく解説します。
そもそも眼内レンズって何?
白内障になると、目の中にある「水晶体」という部分が濁ってきます。
白内障手術では、この濁った水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズを入れます。
その人工レンズが、眼内レンズです。
この眼内レンズには、大きく分けて
単焦点レンズと多焦点レンズがあります。
単焦点レンズとは?


単焦点レンズは、名前のとおり、ピントの合う距離が基本的に1か所のレンズです。たとえば、「遠くを見やすくする」 たとえば、「近くを見やすくする」などのように、合わせた場所により1か所にはピントを合わせることができます。遠くにピントを合わせると遠くは見やすくなりますが、近くを見るときには老眼鏡などが必要になることがあります。反対に、近くにピントを合わせることもできます。だいたい手元30㎝にピントを合わせた場合は、新聞やスマホを裸眼で見ることは便利ですが、普段の生活はメガネをかけないと不自由なことが多いです。
つまり単焦点レンズでは、
「手術後どの距離を裸眼で見やすくしたいか?」
を考えることが大切です。

こちらの画像は単焦点レンズと多焦点レンズの見え方を家の中で比較した画像です。
単焦点レンズを遠くに合わせて入れた場合には、裸眼では遠方の時計やテレビはピントが合い見やすいことがが多いです。しかし、雑誌やスマホに関してはピントが合わず、ぼやけてしまうので手元用の老眼鏡が必要となります。
多焦点レンズを入れた場合には、ピントが合う場所が単焦点レンズよりも増えるため、比較的遠くや近くが見やすくなることがありますが、全て100%の見え方になることは難しいかもしれません。それでも日々の生活の中でメガネをかける場面を減らすことはできると思います。
多焦点レンズとは?
多焦点レンズは、複数の距離にピントが合いやすいように作られたレンズです。
遠くと近く、または遠く・中間・近くなど、レンズによって見え方の特徴は異なります。
そのため、単焦点レンズと比べて、メガネを使う場面を減らせる可能性があります。
ただし!!
「多焦点レンズを入れれば、すべての距離が完璧に見えて、もうメガネは絶対に必要ない!」
というわけではありません。
見え方には個人差があり、レンズにもそれぞれ特徴があります。

こちらの画像は、夜の運転時の単焦点レンズの見え方のイメージと、多焦点レンズのに見え方のイメージを比較した画像になります。(単焦点レンズに関しては遠方にピントを合わせた場合となります。)単焦点レンズは遠方にピントを合わせることで、夜間においても遠方の対向車や看板は見やすいことが多いです。しかし、車内の手元のハンドルやメーターは見づらく感じることがあります。
多焦点レンズの夜間の運転の見え方においては、ハロー(光の周りに輪っかのようなものがにじんで見える)やグレア(光がぎらついたり強くまぶしく感じる、全体的に広がって見える)のような見え方を感じてしまう場合があります。
見え方はあくまでもイメージですので、実際の見え方には個人差もありますし、選ぶレンズによっても変わります。
ご自身が白内障の手術を考えた時に、多焦点レンズは単焦点レンズより優れているの?と思われる方もいるかもしれませんが、ここは、患者さんにぜひ知っておいてほしいところです。
単焦点レンズと多焦点レンズは、「どちらが優れているのか」という話ではありません。
それぞれのレンズには特徴があります。
たとえば、
- 車の運転をよくする
- パソコンを長時間使う
- 本やスマホをよく見る
- スポーツをする
- できるだけメガネをかけたくない
- 家の中の生活範囲がよく見たい
- 手元を見る仕事である
など、生活スタイルは人それぞれです。
だからこそ、
「どのレンズが一番高性能か?」ではなく、「どのレンズが自分の生活に合っているか?」
を考えることが大切です。
レンズを選ぶ前に考えてみてほしいこと
白内障手術を受ける前に、
「手術後、何が裸眼で見えると一番うれしい?」
ということを考えてみてください。
テレビ?車の運転?パソコン?料理?スマホ?読書?
自分が毎日の生活で何を大切にしているのか?!
それが、レンズを選ぶときの大切なヒントになります。
そして、レンズを検討するときは、是非、一人では決めず、眼科で相談することをおすすめしま
す。白内障の手術をするということは、新しいこれからの見え方を考えるということになります。
見え方は、ずっと同じではなく変化します。見えることは当たり前ではありません。
だからこそ、自分自身の見えるに向き合う!寄り添う!その機会が白内障の手術になるかもしれま
せん!!

回折型(かいせつがた)
回折型は、遠く・中間・近くの見え方をバランス良く目指して設計された多焦点レンズです。
一方で夜に街頭や車のライトを見ると、光がにじんだり、輪のように見えたりする(ハロー・グレア)と感じる方もいます。また見え方には慣れるまでに時間がかかる場合があります。
屈折型(くっせつがた)
屈折型は、レンズの場所によって光の曲がり方を変え、複数の距離にピントが合うよう工夫された多焦点レンズです。
遠くの見え方を保ちながら、中間や近くも見やすくなるよう設計されています。回折型とは光の仕組みが異なりますが、目的は「複数の距離を見やすくすること」です。
現在の日本では選べるレンズの種類が限られているため、実際に使用される機会は以前より少なくなっています。
焦点深度拡張型(EDOF:エドフ)
EDOFは、「ピントが合う範囲」を広げることを目指して設計されたレンズです。
遠くから中間までを自然につなぐような見え方が特徴で、パソコン作業や家事、買い物などの日常生活で見やすいと感じる方もいます。
一方で、細かい文字を長時間読む場合や、スマートフォンを近い距離で使う場合には、老眼鏡があると見やすい場合があります。
なお、EDOFには回折型と非回折型があり、レンズによって光学設計や見え方の特徴は異なります。
レンズ選びで大切なこと
どのレンズにもメリットと注意点があり、「一番良いレンズ」は人によって異なります。
普段の生活で何を重視したいのか(読書・パソコン・運転・スポーツなど)や、目の状態によって適したレンズは変わります。
気になることがあれば、手術前の診察で眼科医とよく相談し、自分の生活に合ったレンズを選ぶことが大切です。

レーシックやICLを受けたことがある方は?
過去にレーシックやICLなどの手術を受けたことがある方は、白内障手術の前にそのことを伝えて
おくことが大切です。過去の目の手術によって、眼内レンズを選ぶときや度数を決めるときに、通常とは異なる検討が必要になる場合があります。詳しいことはまた別の記事でお話ししますが、
「昔のことだから関係ないかな?」と思わず、過去に受けたレーシックやICLの手術以外の目の手術も伝えておきましょう!!

白内障手術のレンズ選びで、
「先生にお任せします」と言われる患者さんも少なくありません。
もちろん、医師と相談することは大切です。でも、先生にはあなたが普段、
何をよく見るのか!何をするときに困っているのか!
手術後、どんなふうに見えたらうれしいのか!
そこまでは、言葉にしないと伝わらないこともあります。
レンズ選びに正解がひとつあるわけではありません。
あなたの生活に合った「見え方」を考えること。
それが、レンズ選びの第一歩だと思います。
まとめ
単焦点レンズは、基本的に1つの距離にピントを合わせるレンズ。
多焦点レンズは、複数の距離を見やすくすることを目指したレンズ。
どちらが良い・悪いではなく、自分の生活や希望する見え方に合っているかが大切です。
白内障手術は、濁りを取るだけではなく、これからの「見え方」を考える機会でもあります。
焦って決める必要はありません。
「私は手術後、何が裸眼で見えたら一番うれしいだろう?」
まずは、そこから考えてみてくださいね。”見える”ことは当たり前ではありません。白内障手術後に自分自身の新たな”見える”に向き合うことはとても大切です。眼科ナースしーさんたはあなたの”見える”に寄り添い、少しでも皆さんの役に立てる発信をしていきたいと思っています。

白内障シリーズ第8回
[白内障手術後に気をつけること]
について、眼科ナースの視点からわかりやすく解説します。

