白内障の手術後によくある見え方の変化

白内障

9 《 白内障シリーズ 第9回 》

今回は、白内障の手術後によくある見え方の変化についてお話していきます。

長年悩まされた見えにくさから解放され、明るい世界が戻ってきたでしょうか?でも、手術が終わってすぐに「あれ?思ってたより見えない…」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。実は、術後の見え方はすぐに完璧になるわけではなく、少しずつ変化しながら安定していくものなんです。このページでは、そんな術後の見え方の変化について、眼科ナースしーさんたが、イラストを見ながらわかりやすく解説していきます。どうぞリラックスして読んでみてくださいね。

1.術後すぐに、あれ?見えにくい?そう思っても焦らないで!!

白内障手術後の見え方には個人差があり、まぶしさや色の違いを感じることがあることを紹介する画像

画像1

1-1 なんだかぼやける?視力が安定しない理由

画像1の①にあるように、「手術をしたからといって、すぐにバッチリ見えるわけではない」んですね。これにはいくつかの理由があります。まず、手術という行為そのものが目にとっては大きなイベントです。目の中は、手術のダメージによって一時的に炎症を起こしています。この炎症が、見え方をぼやけさせている大きな原因です。また、手術の影響で一時的に眼の中の圧力(眼圧)が上がってしまうこともあり、それがかすみの原因になることもあります。さらに、角膜(黒目の部分)が一時的にむくんでしまうことも、見えにくさに関係しています。これらの状態は、時間が経って炎症やむくみが落ち着けば、自然と良くなっていくことがほとんどです。

1-2 術後の炎症や高眼圧って?

専門的な言葉で少し難しく聞こえるかもしれませんが、要は「手術のせいで目が一時的に腫れていたり、パンパンになっていたりする状態」です。しーさんたも「回復のスピードには個人差があります」と言っていますよね。翌日にはクリアに見える方もいれば、1週間、1ヶ月かけてゆっくり見え方が落ち着いていく方もいます。手術直後の見え方だけで一喜一憂せず、気長に経過を見守る気持ちが大切です。もちろん、あまりにも見えにくい、痛みがひどい、といった場合は、炎症や高眼圧が強く出ている可能性があります。自己判断で放置せず、すぐに手術を受けた眼科に連絡して診察を受けてくださいね。

2. こんな風に見えるかも?術後の特徴的な見え方

白内障手術を受けると、濁った水晶体の代わりに透明な眼内レンズが入ります。そのため、今までとは光の入り方が変わり、見え方に独特の特徴が出ることがあります。

2-1 うわっ!まぶしい! 光の感じ方の変化

画像1の②にあるように、術後に「まぶしい」と感じる方は非常に多いです。これは、長年濁った水晶体を通して物を見ていたため、光が網膜に届きにくい状態だった目が、急にクリアなレンズを通して光をたくさん受け取れるようになったためです。瞳孔が光の量に慣れるまで、しばらくの間は、サングラスをかけるなどして調整するのがおすすめです。しーさんたがサングラスを持っているイラストも参考になりますね。このまぶしさは、時間が経つにつれて慣れていくことが多いです。

2-2 世界が青っぽく見える? 色の違い

また、「色が違う?」「世界が青っぽく(または白っぽく)見える」と感じることもあります。これも、今まで濁った水晶体によって、光が黄色っぽくフィルターがかかっていた状態が、クリアなレンズに変わることで、本来の白さや青さが鮮明に感じられるようになるためです。最初は違和感があるかもしれませんが、これも脳が新しい見え方に慣れていくにつれて、自然と感じられなくなっていきます。鮮やかな色彩を楽しめるようになる、嬉しい変化でもありますね

2-3 片目だけ手術した場合のアンバランスな見え方

もし、片目だけを手術を受けた場合は、手術していない方の目と見え方が大きく異なり戸惑うかもしれません。

視力の差・・・手術した目はクリアに見える。していない目は白くぼやけて見える

色の差・・・・手術した目は鮮やかに見える。していない目は黄色っぽく見える

大きさの差・・眼内レンズの度数設定によっては、両眼で見た時に物の大きさが違って見える(不同視・不等像視)こともあります。

これらの違いから、両目を使う生活に慣れるまは、距離感がつかみずらかったり、ふらついたり、目が疲れやすくなることがあります。階段の上り下りや車の運転などは、十分に注意してください。メガネで度数を調整してバランスを整えることもできるので、担当医の先生と相談してみましょう。基本的には片目づつの手術でも、両目での見え方は徐々に馴染んでいくことが多いです。

3、ちょっと気になる…こんな症状、大丈夫?

白内障手術後に黒い影や光のにじみが見える場合と、急に見えにくくなったなど気になる見え方が続く場合は眼科へ相談することを紹介した画像
画像2

黒い影や光のにじみなど、術後に気になる見え方が現れることがあります。急な見え方の変化や症状が続く場合は、自己判断せず担当医に相談してください。

3ー1 黒い影や糸くずが動く?「飛蚊症」について

画像2の③にある「黒い点や糸くずのような影が見える…」という症状は、「飛蚊症(ひぶんしょう)」と呼ばれます。

これは、目の中にある硝子体(しょうしたい)というゼリー状の物質の濁りが、網膜に影を落とすことで起こります。手術前からあったものが、術後によく見えるようになって気付くこともありますし、手術の影響で新しく現れることもあります。

多くの飛蚊症は加齢などが原因で、病気ではありません。気にはなりますが、見え方に慣れていくことが多いです。

ただし、注意が必要です!

もし、以下のような症状を伴う場合は、網膜剥離(もうまくはくり)や眼底出血などの目の病気のサインである可能性があります。

 飛蚊症の数が急に増えた

 影の大きさが急に大きくなった

 視野の一部が欠けて見える(カーテンがかかったような見え方)

 光がピカピカ走る(光視症)

このような症状があったら、絶対に放置せず、すぐに眼科を受診してください! 早期の治療が重要になります。

3-2 光がにじんで見える?

また、夜間に街灯や車のヘッドライトが「まぶしい・にじむ」ように見えることもあります。これは、眼内レンズの特性(特に多焦点レンズや、稀に単焦点レンズでも)や、術後の目の状態によって起こりやすい現象です。

特に、夜間の運転に不安を感じる場合は、担当医に相談し、相談するようにしましょう。こちらも時間とともに改善することが多いですが、状況によっては対策が必要です。

3-3 大切なサインを見逃さない!眼底疾患の可能性

白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを入れる手術です。しかし、網膜や視神経など、目の奥(眼底)に病気がある場合は、手術をしても視力が十分に回復しないことがあります。

しーさんたのイラスト「急に見えにくくなった」「見え方がおかしい」「症状が続いている」というサインは非常に大切です。術後に視力が安定した後に、再び見えにくくなったり、特定の症状が続いたりする場合は、眼底の病気が隠れている可能性も否定できません。自己判断せず、必ず担当医に詳しい検査を依頼してください。早期発見・早期治療が、大切な視力を守ることにつながります。

3-4 斜視の人の術後の見え方について

元々斜視(目の位置がずれている状態)がある方の場合も、基本的には白内障手術を受けることは可能です。

手術によって視力が改善することで、今までぼやけていた分、斜視のずれが目立つようになることもあれば、逆に両目でのバランスが整い、斜視が気にならなくなることもあります。見え方の変化は個人の目の状態によって大きく異なります。

斜視がある方は、手術前に担当の医師と、術後の見え方や期待できる効果について、十分に相談しておくことが非常に重要です。術後の経過観察でも、目の位置や見え方のバランスを丁寧に診てもらうようにしましょう。

4. レンズの種類で見え方はどう違うの?~単焦点レンズ編~

白内障手術で入れる眼内レンズには、大きく分けて「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」があります。どちらを選ぶかによって、術後の見え方が大きく変わります。まずは、一般的な健康保険が使える「単焦点レンズ」について見てみましょう。

単焦点眼内レンズで遠くまたは近くにピントを合わせた場合のメガネの必要性を説明する画像
画像3

単焦点眼内レンズは、ピントを合わせた距離以外を見るときにメガネで補います。遠くに合わせるか、近くに合わせるかで必要なメガネが変わります。

4ー1 単焦点レンズってなに?

単焦点レンズは、**「1つの距離にピントが合う」**レンズです。遠く、中間、近くのどこか1点に焦点を合わせるため、ピントが合っている距離は非常によく見えますが、それ以外の距離はぼやけてしまいます。

4-2 遠くにピントを合わせた場合の見え方

画像3の左側にあるように、「遠くにピント」を合わせる設定にすると、景色、テレビ、映画などは裸眼でくっきり見えます。しかし、手元の本や新聞、スマホなどはぼやけてしまうため、快適に見るためにはメガネが必要になります。

4-3 近くにピントを合わせた場合の見え方

逆に、画像3の右側にあるように、「近くにピント」を合わせる設定にすると、手元の読書、スマホ操作、編み物などは裸眼で楽に行えます。しかし、遠くの景色や運転などはピントが合わないため、メガネをかけないと見えにくくなります。

4-4 結局、メガネは必要?

しーさんたのイラストにもあるように、「ピントを合わせていない距離は、メガネで補います」。これが単焦点レンズの最大の特徴です。多くの人は、日常生活の利便性を考え、遠くにピントを合わせる(遠くを見る時は裸眼、近くを見る時は老眼鏡)ことが多いです。ご自身のライフスタイルに合わせて、どの距離を重視するかを決めるのがポイントです。

5. レンズの種類で見え方はどう違うの?~多焦点レンズ編~

続いて、近年選ぶ人が増えている、自由診療(保険適用外)の「多焦点レンズ」について見てみましょう。こちらは「メガネがいらない生活」を目指すためのレンズです。

さて、先ほどご紹介した「単焦点レンズ」に対し、最近注目されているのが、複数の距離にピントを合わせる工夫がされた「多焦点レンズ」です。画像4を見てみてください。

多焦点眼内レンズは遠く・中間・近くをカバーする一方、メガネが必要になる場合や術後すぐは度数が安定しないことを説明する画像
画像4

多焦点眼内レンズでも、メガネが完全に不要になるとは限りません。術後の見え方には個人差があるため、メガネを作る時期も担当医に相談しましょう。

5-1 多焦点レンズの魅力と仕組み

多焦点レンズは、その名の通り「複数の焦点」を持っています。遠くを見るとき、パソコンや家事をする中間距離、そしてスマホを見る手元、これら複数の距離を1枚のレンズでカバーできるように設計されています。

「見える範囲が広がって快適に♪」と、しーさんたが紹介しているように、日常生活においてメガネをかける頻度をぐっと減らせる可能性があるのが最大の魅力です。趣味でスポーツをする方や、頻繁に遠くを見たり近くを見たりする活動的な方には、非常に心強いパートナーになります。

5-2 「メガネは絶対にいらない」とは限らない?

ここで少し注意していただきたいのが、多焦点レンズを選んだからといって、「一生メガネが不要になる」とは限らない、という点です。

画像4の注意書きにある通り、以下のようなケースではメガネが必要になることがあります。

 夜間の光が少し気になる: 多焦点レンズの特性上、夜間の街灯や車のヘッドライトを見たときに、光の輪が見えたり(ハロー)、光が放射状に伸びて見えたり(グレア)することがあります。これはレンズの構造上どうしても避けるのが難しい現象ですが、時間とともに脳が慣れて気にならなくなる方がほとんどです。

 非常に細かい作業や暗い場所: 針仕事のようなかなり細かい作業を長時間行うときや、薄暗いレストランのメニューを見る際など、もう少しハッキリ見たいなと感じる場面では、老眼鏡や予備のメガネを使う方が楽に感じることもあります。

「絶対にメガネを外したい!」という強い希望だけでなく、「メガネの煩わしさを減らしたい」「生活の質を向上させたい」という期待値で検討していただくと、術後の満足度も高まりやすいですよ。

ここまで、いろいろな見え方の可能性をお話ししてきました。手術を終えた後は、体も心も少し疲れやすい時期かもしれません。最後に、術後を安心して過ごすためのアドバイスをいくつかお伝えしますね!!

白内障手術は、目というカメラのレンズを交換する手術ですが、その情報を処理するのは「脳」です。長年、濁ったレンズを通した見え方に慣れていた脳は、術後の新しいクリアな視界に、すぐには順応できないことがあります。

「なんだか以前より違和感がある」「期待していたほどではない」と感じたとしても、それは「脳が新しい見え方を学習している最中」かもしれません。焦らずに、数週間から数ヶ月という期間をかけて、ゆっくりと新しい世界に慣れていってくださいね。

この記事の最初から何度もお伝えしていますが、一番大切なのは、あなたの目そのものに異常がないかを確認することです。

 「いつもの違和感」と「危険なサイン」の違い

手術直後の軽い異物感や、先ほどお話しした飛蚊症のようなものは、多くの人が経験する通過点です。でも、「急に見えなくなった」「視野が欠けてきた」「激しい痛みがある」といった症状は、緊急のサインかもしれません。

もし少しでも「おかしいな?」と感じたら、インターネットで検索して不安を大きくするよりも、まずは手術を受けた眼科の先生に相談することをおすすめします。

 定期検診は欠かさないでください。

術後しばらくは、傷口の治り具合や、炎症が起きていないか、眼圧が安定しているかをチェックするために、何度も通院が必要になることがあります。面倒に感じるかもしれませんが、これこそがあなたの「見える未来」を守るために最も重要な時間です。予約した日は忘れずに受診してくださいね。

まとめ

さいごに:見える喜びを、これからも大切に!!

白内障手術は、多くの人が受けている安全性の高い手術ですが、それでもあなたにとっては一生に一度の大きな出来事です。

術後の見え方は、レンズの選び方、目の状態、そして個人の感じ方によって、本当に千差万別です。誰かと比べて「あの人はすぐに見えるようになったのに」と落ち込んだり、不安になることはないと思います。あなたの回復ペースを大切にしてください。

もし、今術後の見え方で不安を感じているなら、それはあなたが「これからもっと良く見えるようになりたい」と前向きに考えている証拠でもあります。そんな時は、遠慮なく担当医に「もっとこう見たい」「こういう場面で困っている」と伝えてみてください。先生やスタッフは、あなたのその希望を叶えるためのベストパートナーになってくれると思います。

クリアになった世界で、これからもたくさんの美しい景色を見て、読書や趣味を楽しんでくださいね。しーさんたも、ずっと応援しています!

(※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状については、必ず担当の眼科専門医の診断を受けてください。

白内障シリーズ 第10回

 白内障の手術のまとめ

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